『華國ノ史』

カルパトス平原の戦い

 烈風のフェネックは異名通り、退却と同日に船に乗り込み、出港する。

 
 海を渡り、山脈を超え華國領土に侵入した。

 
 関所に全兵力を割かなかった華國軍は西にも民間兵を多く配備していた。

 
 守りの硬い要塞の多い西側は鉄壁の海岸と呼ばれる程であった。

 
 しかしフェネックはこれらを全て無視し、山脈関所へと進撃する。

 
 民間兵達が騎馬五千を見た時の驚きは大きかった。


 補給も何も受けず、騎馬での進撃は早い。

 
 民間兵がこれを追い要塞から十分離れた所でフェネックは転身、撃破。


 自軍の死体も負傷兵もその場に置き去りにしてまで軍を進めた。


 フェネックがボーワイルドより受けた指令はただ一つ。


 船を捨てても構わない、華國王都へ要塞兵が集結しようが構わない。


 ただ一つ。

 関所にいた兵の全滅。


 数よりも、船を失うよりも彼等が王都で守りに入る事の方がボーワイルドにとって脅威だったのである。


 関所を征したボーワイルドは谷間の南に急ぎ高台を設置させた。


 流石に大軍だけあり、その作業は直ぐに完了する。

 
 北側華國側へ生き残った魔法使いが氷の橋を掛け、

 向こう岸に兵を送り南より伸ばしたロープを固定させる。

 
 これが煌皇軍が考えた作戦の一つであった。

 
 深い谷間に幾つものロープが掛けられ、ゴンドラが兵と物資を渡した。


 ボーワイルドの的確な指示でその作業速度はフェネックに負けぬ早さであった。


 これらにより、負傷兵を含む国境守備兵二千、フェネックの五千を除いた煌皇軍九千は華國領土へと侵攻に成功する。


 この時、華國王都までの防衛線は3つ。

 
 兵力はセブンの率いる連合部隊で負傷者、武器の扱えない者、女性、老人を除くと実質的に戦力となる者は四百。


 王都守備兵、予備兵を合わせ五千足らずであった。

 
 王都では西からの報告を受け、民間人を主要都市へと避難させ始めた。


 しかし、多くの者が女であれ、老人であれ、戦える者は王都に留まる事になる。


 皆がこの國を、そして王を愛していたのだ。

 

 

 
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