危険なキス
「ちょっとこの学校に知り合いがいてな。
急遽、教師として働いてほしい、ってせがまれたんだよ」
「え?」
急に説明を始めた先生に、一瞬なんの話をしているのか分からなかった。
だけどすぐに頭を整理させる。
「一応、教員免許は持ってんだよ。
だけど、固定して働くのが嫌で、ずっとプラプラ家庭教師の仕事をしてただけ」
「あれ……?でも確か、先生って大学院生じゃ……」
「ああ、あれ嘘」
「ええ!!」
あまりにも悪びれなしに言う先生に、思わず声を荒げる。
こんなこと、お母さんが知ったらどうなるか……。
「卒業して、職もつかずに家庭教師バイトをするって言うと、あまり評判よくねぇだろ。
なら、院生といったほうが、バイトとして通用するからな」
「……」
お気楽な生き方過ぎて、少し眩暈がした。
あたしはずっとこんな人に、勉強を教わっていたのか……。
でもまあ……
教え方がうまいってのは事実だったし。