危険なキス
 
少し真面目な顔で言われた。
だけどすぐにいつもの意地悪な目になると、


「涙、吹っ飛んだだろ?」


と、ニヤッと笑った。


「…っあんたのほうが最低!!」


あたしの怒りは頂点に達し、そう言い捨てると、準備室のドアを力の限り閉めた。


物理室を出ると、そこにはバツが悪そうな顔をした楠木が立っていて、あたしは一度睨むと目の前をスルーした。
楠木は慌ててあたしの後を追う。


「柊っ、悪かったって」
「……べつに。本気にしたあたしがバカなだけだし」
「いや、そうじゃなくて……」


後ろで必死に楠木が言い訳じみたことを言っているけど、何をいまさら…と、あたしの耳はてんで聞く気がない。


あたしは立ち止まることなく、足早で教室へと入った。


「あ、紫乃。おつかれー」


教室に入るなり、麻衣子が出迎えてくれる。
あたしはため息交じりで麻衣子を見ると、


「麻衣子……。なんか、さ……」
「え?」


急に泣きそうな顔をするあたしに、麻衣子は戸惑う。

そこへ、追いついた楠木があたしたちのもとへやってきた。
 
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