危険なキス
 
「楠木……」
「お前、もう大丈夫なのか?」


本当に心配そうな顔をして、あたしに詰め寄ってきた楠木。

その顔に少しだけ驚いて、目をぱちくりさせた。


「う、うん……。ごめん、心配かけたね」
「べ、べつに心配なんかっ……」


人が素直に言っているのに、あえて否定する楠木。

お前はツンデレか、と心の中で突っ込んだ。


「でもあの時、急に倒れるから、すげービックリしたし」
「そうだよね。あたしも倒れるなんて初めて」
「本当は、俺が抱きかかえようと思ったんだけどさ……」


目を伏せて、少しごにょごにょしながら話す。

その態度があまりにも勘違いしてしまいそうで、あたしはあえて明るく返答した。


「なーに言ってんの。あんたが抱っこするのは、麻衣子だけにしなさい」

「いてっ……」


背中をバンと叩いて、空気を変える。

楠木は、小さく「はぁ…」とため息をついていた。
 
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