危険なキス
 
以前のように、机の上に参考書と問題集を広げた。
だけどあの時と違うのは、横に並ぶのではなく、向かい合わせで座るということ。

だからついつい、先生の顔を、何度も盗み見してしまっていた。


いつもと違う、先生のファッション。
決して真面目なスタイルではなく、勉強が不似合の格好。

だけど悔しいけど、こっちのほうが数倍カッコよかった。


「で?お前話聞いてんの?」
「へ?あっ、すみませっ……」


盗み見のはずが、ついガン見してしまっていたらしい。

先生が、呆れながらあたしを見ている。


「お前、見惚れんのもいいけど、もっと受験生ってことを自覚しろよな」
「み、見惚れてなんかっ……。でも、すみません……」


先生の言っていることはごもっともだ。

もうすぐ受験だというのに、ちょっと浮かれすぎてるかも……。

あたしは反省しながら、再び参考書へと視線を戻した。
 
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