危険なキス
 
「あの……一つ聞いてもいいですか?」
「何?」
「先生って……本当のところは、どこの大学?」
「T大」
「え!!」


予想外の答えに、あたしは再び顔をあげて先生の顔を凝視してしまった。

T大と言えば、あたしがまさに目指している大学。
名門中の名門だ。


「それじゃあ、院生ってのが嘘なだけであって、T大卒ってのは本当だったんだ……」
「そりゃな。そこまで嘘つけたら、誰でもT大卒って言って、カテキョやっちまうだろ」
「確かに……」


いったい、何を証明として、お母さんが湯浅先生を選んだのかは分からない。
確か、入ってたチラシとかだった気がするけど……。

さすがのお母さんも、べつに外見だけで選んだわけじゃないのか。


「お前もT大受けんだろ?
 言っとくけど甘くねーぞ」
「わ、わかってますっ……」


T大に入ることが難しいのは分かってる。
今ですら、模擬判定はBどまり。早くA判定が出るように頑張らないと……。


「でももしT大に入ったら……先生の後輩になるんですね」
「そういうことだな」
「……」


なんだかそれだけで、少しやる気が増えた気がした。
 
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