危険なキス
 
「はい、そこまで」
「はぁ……」


20分はあっという間に経ち、あたしは思わずその場に伏せた。

1問難しいのがあった。
そこ以外は自信あるけど、大丈夫かなぁ……。


「ほら、これでも飲んどけ」
「あ……ありがとうございます……」


先生はコーヒーを入れたマグカップを渡すと、自分も飲みながら隣に座った。

さっきまで向かい合わせだったのに、急に隣に座られてドキッとした。


ずっと勉強漬けの脳に、砂糖とミルクがたっぷり入ったコーヒーはすごくおいしかった。

だけどその間にも、先生は採点を始めている。


しゅっ、しゅっ、という丸をつける音。
それが別の音になるのが怖い。

あたしはドキドキしながら、盗み見するように答案用紙を見つめていた。


「やるじゃん」
「え!?」
「満点」
「ほんとっ!?」


先生は今採点したばかりの答案用紙をあたしに返した。

丸ばかりの答案用紙。
不安だった問題も、どうにか正解できてた。
 

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