危険なキス
クラスに戻ると、相変わらず奇異な目で見られた。
だけどいちいちそんなことは気にしていられないので、何の反応もせずに席につく。
麻衣子はいつもと変わらず接してくれて、お昼は一緒に食べ、授業はなんでもなくいつも通りに過ぎた。
そして帰りのホームルームになると、湯浅先生がクラスに入る。
クラスメイトから、明らかなざわついたささやきが聞こえ、先生はあえて口を開いた。
「今朝、僕と柊さんの写真が貼られているということがありましたが……
彼女は僕がここに赴任する直前までの、家庭教師の教え子でした。
今回は、彼女の母親からということで、家庭教師へのお礼をしに来てくれただけです。
皆さんに混乱を招いてしまって申し訳ありませんでした」
丁寧に深々とお辞儀をする先生。
その態度にクラスメイトもたじろぎ、「そういうことだったんだ」と納得し始めた。
校長先生たちだけじゃなく、自分のクラスの生徒すらもうまく丸め込んでしまう先生。
ほんと、相変わらずだな……と、あたしだけが呆れ果てていた。