危険なキス
 
クラスに戻ると、相変わらず奇異な目で見られた。
だけどいちいちそんなことは気にしていられないので、何の反応もせずに席につく。


麻衣子はいつもと変わらず接してくれて、お昼は一緒に食べ、授業はなんでもなくいつも通りに過ぎた。

そして帰りのホームルームになると、湯浅先生がクラスに入る。


クラスメイトから、明らかなざわついたささやきが聞こえ、先生はあえて口を開いた。


「今朝、僕と柊さんの写真が貼られているということがありましたが……
 彼女は僕がここに赴任する直前までの、家庭教師の教え子でした。
 今回は、彼女の母親からということで、家庭教師へのお礼をしに来てくれただけです。
 皆さんに混乱を招いてしまって申し訳ありませんでした」


丁寧に深々とお辞儀をする先生。

その態度にクラスメイトもたじろぎ、「そういうことだったんだ」と納得し始めた。


校長先生たちだけじゃなく、自分のクラスの生徒すらもうまく丸め込んでしまう先生。

ほんと、相変わらずだな……と、あたしだけが呆れ果てていた。
 
< 306 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop