君が好きだから嘘をつく
「さっきの近藤くんだって年下は好みもあるけどさ、3歳下でも可愛くていい子じゃない。楓のこと一生懸命追いかけて食事誘ってさ」

「・・・はい」

あの時の近藤くんの顔が頭に浮かんだ。それは緊張していた顔だった。

「その他にも、少し前に誘ってきた企画部の大橋さん、同期で入社した頃から何かと声をかけてきている染谷くん。恋をするならいくらでもチャンスはあるじゃない?」

確かに今まで声をかけてもらったことはあったのだけど、その誘いに乗ることが一度もできなかった。

「そうですね・・・声かけてもらえるなんて幸せなことなのに、でも私・・・」

そう言葉を濁して答えると、咲季先輩はすぐ切り返してきた。

「山中くんじゃなきゃ、ダメなの?」

直球だった。

そう、咲季先輩は知っているのだ。私の気持ちを。

感の鋭い人だから、誰にもばれないように隠してきた健吾への気持ちを、咲季先輩には早い段階で気付かれてしまい、2人でいた時にそっと聞かれた。
絶対に誰にも言わない約束をしてもらって、私は自分の気持ちを認めた。

それからはまるで姉のように恋愛相談にのってくれていた。表に出せない想いを。

「はい。この前健吾が伊東さんのことを、彼氏がいるなら諦めなきゃいけないのに、どうしても惹かれるって言っていたのと同じで、私も健吾に好きな人がいても諦めることができないんです」

この前健吾がため息まじりに吐き出した言葉が、自分の気持ちそのままだったので、ついつい咲季先輩に語ってしまった。

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