君が好きだから嘘をつく
「暫く来ていなかったんですか?」

「元彼とよく来ていたお店だからね。思い出ってわけじゃなく、大好きなお店だったから久しぶりに行きたいなって思ったの。楓にも気に入ってもらえてよかった。ここはお酒はもちろん料理も美味しいよ」

咲季先輩はニコニコしながらメニューを渡してくれた。
咲季先輩がモト彼との思い出のお店なんだ~、なんて感心しながら渡されたメニューを見ると、料理はどれも美味しそう。
飲み物はせっかくお洒落なお店に来ているのでカクテルの中から選んだ。
料理は咲季先輩オススメのものを頼んで、食べてみたらどの料理も美味しくて感動!
お洒落なお店、美味しいお酒に料理、もう最高~来てよかった!なんて感動していたら、「ところでさ!」って咲季先輩がテーブルにひじをつき、手のひらに顎を乗せながら聞いてきた。
私はカクテルに口をつけながら咲季先輩の顔を見た。

「楓はさぁ、声かけてくれる人も、密かに想ってくれる人もいるのにもったいないよね。私が楓になりたい位だよ。」

突然そんなことを言われて、口にしていたカクテルでむせそうになってしまった。また冷やかし?

「何ですか?突然!私そんなにモテていないって言ってるじゃないですか。」

「いやいや、声かけられたのは楓に伝わっているけど、伝わっていない想いもあるよ。楓が気付いていないならさ、モテないひがみで教えてやらないけどね」

美人なのに笑顔でイジワル言いながら、変顔して見せる所がまた憎めないのだ。

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