君が好きだから嘘をつく
「ごめんって言われることしか考えていない?」

「そうだよ、その答えしか想像できない。今までずっと一緒にいたけど、健吾が好きになったのは私じゃなかったもん。伊東さんを想っている健吾に好きって言っても、私にとっていい答えが返ってくることなんて想像できない」

澤田くんに返す言葉で自分の気持ちも乱れてしまう。ここが自分でも嫌になるところなんだ。
健吾が悪いわけじゃない、何もしない私がいけないのに。
気持ちを伝えられる瞬間はたくさんあったはずなのに、言えなかった。

『好き』って言葉がこんなに重い言葉になると思わなかった。

英輔に振られてから好きと思った人にはもっと簡単に伝えていたのに。

本当の恋に出会ってしまうと、伝えられなくなってしまうなんて・・・

「もっとみんなの気持ちが解りやすければいいのにね」

そう言った澤田くんの言葉に素直に頷けた。

「うん、そしたらこんなに辛くなかったかな?」

「う~ん、本物だから辛いのかもね。軽い気持ちなら辛く感じないんじゃないかな?」

確かにそうかもしれない。
だから英輔に振られた後好きになった人に気持ち伝えて振られても・別れても悲しくなかったんだ。
その人達と健吾への想いは全然違った。

「そうだよね、分かる気がする」

私の言葉に澤田くんは小さく頷いた。

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