君が好きだから嘘をつく
「健吾は変わらず接してくれているのに、私いつもグジグジ考えちゃって何かダメだなって思うの。片思いが長すぎたのかな・・・健吾は伊東さんに彼氏がいても想っているし。今日もそうだけどこれ以上2人のこと見たくないって思っちゃうの。自分で健吾の友達としてそばにいられればそれでいいって思っていたのにね・・・今が諦め時なのかな?ってそんなことばかり頭の中グルグルしちゃっているの」

「柚原は諦められるの?それだけ好きな人のこと」

「う~ん・・」

即答できずに言葉がつまる。

「じゃあ諦めたとして、他の人を好きになることができる?柚原が誰かに告白されたら、その人を恋愛対象として見ていくことできると思う?」

「恋愛対象?」

「うん、じゃあ・・例えば僕が柚原のこと好きなんだって言ったら、健吾のこと忘れて僕と付き合うことを考えていくことできると思う?」

突然の話の飛躍に私は止まってしまったのに、澤田くんは少し顔を傾けて「ん?」って微笑んでる。

「健吾のこと・・忘れられるかは・・分からない」

「じゃあ、無理に諦めずに気持ち伝えてみたらどうかな?ただ諦めるのは、今よりもっと辛いと思うよ。健吾も鈍感だからさ、気付かないことたくさんあると思うし。柚原は健吾に気持ち伝えるの恐い?」

「うん・・・恐い。健吾にごめんって言われるのがすごく・・恐い」

それが何よりも心にくすぶっているものなんだ。
健吾に『好き』って言って驚かれるのも、ゴメンって言われるのも、意識して友達でいられなくなるのも恐い。
片思いしている人がみんな感じている感情だと思うけど。

私にはそれを想像することが一番恐い。

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