君が好きだから嘘をつく
「ありがとう。健吾は優しいよね。私だって健吾に幸せになって欲しいって思っているんだよ。健吾はどうなの?伊東さんとは」

なんとか話を切り替える、私の幸せの話は苦手だから。
これだって本当は話したくない内容なんだけどね。

「う~ん。相変わらずだよ。時々飲み会って形で何人かで会ったりして、でも結構話せるようにはなったな。?まあ彼氏と喧嘩したとか、仲直りできたとか。なんか俺、兄貴扱いされてるのかもしれないな」

「兄貴扱い?どうかなぁ。でも健吾だから相談してきているんじゃない?メールしてきたりするのでしょう?」

そう。なんだかんだいって連絡取り合っているしね。
意外に伊東さんと健吾はもう近い距離にいるのかもしれない。
でも、伊東さんには彼氏がいるから、健吾も微妙な立場なんだろうな。
応援すること言っているけど、『彼氏から取っちゃえば?』って言葉だけは言えない・・・言いたくない。

「うん、時々な。あ~あ、何か気晴らしにどこか行くか?楓は土日のどっちか予定空いてる?」

「えっ、うん!どっちも空いてる!」

嬉しい!健吾と出かけるのは久しぶりだもの。もし予定入っていても健吾を取るよ。
さっき涙が浮かぶ程悲しくなったのに、嘘みたいに心が弾んでいる。
こんな風に私の心は健吾次第なんだ。

「楓はどこ行きたい?」

「う~ん、まだ寒いかもしれないけど・・・海!」

そう、健吾とよく行った海に行きたかった。
2人で初めて出かけたのも海だった。その海が大好きでまた行きたいって思った。

「よし!じゃあ土曜日でいいか?10時に迎えに行くな」

「うん、楽しみにしてるね。寝坊しないでよ」

「わかった。せっかくだから晴れるといいな」

「そうだね。じゃあ土曜日を楽しみにして仕事頑張る。じゃあまた明日・・・ってもう今日か。ふふっ、おやすみ」

「うん、おやすみ」

幸せな気持ちで電話を切った。

落ち込んだり、涙ぐんだり、嬉しくなったり忙しい電話。
結局私は健吾でいっぱいなんだ。

   -おやすみ健吾ー



< 23 / 216 >

この作品をシェア

pagetop