甘き死の花、愛しき絶望
燃える花が全部、無人の路上に落ちたことを確認し、白髪の少年は、この場から立ち去ろうとした。
まるで今まで何もなかったかのように。
ビルから飛び降り、それから胸に巨大な花を咲かせて散った黒髪の少年なんて最初から居なかった、といっても良いくらいに。
けれども、通りのアスファルトの道路は溶けてゆがんでいた。
付近の街灯や信号機は、落ちていた。
今までのことが悪夢ではなく。
現実だといち早く認識出来た野次馬の一人が、少年に声をかけた。
「き……君は誰だね!」
その、裏返った中年サラリーマンの声に、白髪の少年は、足を止めて振り返った。
「……僕は、虫です。
花葬者の火粉(かふん)を増やし、こぼれた物を、喰う」
「そうじゃなく!
君は、どこに住んでいる誰だ!?」
「……花葬者じゃないあなたに、教える必要は、無いです」
「必要無いだと!」
白髪の少年にあっさりと切り捨てられて中年サラリーマンは、怒鳴った。
「見たところ、未成年のようだが、自覚はあるんだろうな!?
お前は、花葬者を殺したんだぞ!
毒を飲ませたのか、それとも、他の方法を取ったのかは、判らない!
けれども、火粉を増やして花葬者の彼を死に追いやったのは、お前だろう!」
まるで今まで何もなかったかのように。
ビルから飛び降り、それから胸に巨大な花を咲かせて散った黒髪の少年なんて最初から居なかった、といっても良いくらいに。
けれども、通りのアスファルトの道路は溶けてゆがんでいた。
付近の街灯や信号機は、落ちていた。
今までのことが悪夢ではなく。
現実だといち早く認識出来た野次馬の一人が、少年に声をかけた。
「き……君は誰だね!」
その、裏返った中年サラリーマンの声に、白髪の少年は、足を止めて振り返った。
「……僕は、虫です。
花葬者の火粉(かふん)を増やし、こぼれた物を、喰う」
「そうじゃなく!
君は、どこに住んでいる誰だ!?」
「……花葬者じゃないあなたに、教える必要は、無いです」
「必要無いだと!」
白髪の少年にあっさりと切り捨てられて中年サラリーマンは、怒鳴った。
「見たところ、未成年のようだが、自覚はあるんだろうな!?
お前は、花葬者を殺したんだぞ!
毒を飲ませたのか、それとも、他の方法を取ったのかは、判らない!
けれども、火粉を増やして花葬者の彼を死に追いやったのは、お前だろう!」