太陽と月
「たぶん帰りは遅いだろうから先に帰っていいと思うよ。そのまま直帰する事もよくあるから」
「そう...ですか」
呟く様に頷いた私の隣を通り過ぎてく足音
その音を頭の端で聞きながら、ギュッと両手を握りしめた
◇
パキッ
真っ暗な駐車場に不意に足音が響いて、顔を上げる
それでも、周りには変わらず誰もいない
「空耳か...」
溜息と一緒にそう言って、腕時計に目を落とす
時刻は夜の11時
もう先輩達は帰路について
会場や駐車場の電気もすべて落とされた
辺りは真っ暗闇で何も見えない
それでも社用車の駐車場に目を移すと、1台だけ空いている
ズクンと痛む胸を押さえて
その場に再びゆっくりと座り込む