太陽と月


「たぶん帰りは遅いだろうから先に帰っていいと思うよ。そのまま直帰する事もよくあるから」

「そう...ですか」



呟く様に頷いた私の隣を通り過ぎてく足音

その音を頭の端で聞きながら、ギュッと両手を握りしめた










パキッ



真っ暗な駐車場に不意に足音が響いて、顔を上げる

それでも、周りには変わらず誰もいない




「空耳か...」




溜息と一緒にそう言って、腕時計に目を落とす

時刻は夜の11時



もう先輩達は帰路について

会場や駐車場の電気もすべて落とされた



辺りは真っ暗闇で何も見えない

それでも社用車の駐車場に目を移すと、1台だけ空いている



ズクンと痛む胸を押さえて

その場に再びゆっくりと座り込む


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