後輩レンアイ。
「とりあえず、なんでもない。
今のは聞かなかったことにして。」

「……………あ、ハイ。」

なんとなく気まずい雰囲気になったので、じゃ、と言ってあたしは中庭に向かった。
この学園の中庭は、とにかく広い。
無駄に広すぎて、迷子が続出することもある。
あたしはまぁ、いつもテキトーに歩いてれば着くんだけどね。

それはそうと。
どうしたものか…
これから、やっていける気がしない。
嘘がうまくならないと。
ちゃんと隠せるようにならないと。

身を守るため。
家族を守るため。

大事なものを、守るため。

これは綺麗事でもなんでもなく、今まで決して綺麗でなかった人生を送ってきたあたしだから分かることだ。

いつだか他人の母親が子供にこう教えてるのを聞いた。

『嘘はついてはいけません。』

あたしはそうは思わない。
大事な人を守るためなら、嘘だってつく。
嘘だけじゃない。
なんだってする。

そう、たとえそれが、犯罪だとしても。

あたしは強く拳を握る。
そして、再び決心した。

(あたしの心は変わらない。
あの時から、ずっと。
そしてこれからも、変わることはない。
自分が死んだとしても、弟妹だけは必ず守り抜く。)


あたしは独りで、弟妹たちを守っていく。

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