一生もんの道化師
「ええ。ですが、早めに終わらせておかないと自分自身が落ち着かないので、やらせていただきたいんです」

「んー。じゃあ、誰かサポート付けるか？」

「あ、いえ。大丈夫です。イブの日に残業なんかやりたがる人、他にいないでしょうから。僕も気を使ってしまいますし」

「そうか？まぁ、適当な所で切り上げろよ」

「はい。ありがとうございます」


その時高藤さんが何気なく給茶機の方に顔を向け、出来上がった紅茶を手にその場を立ち去ろうとしていた私と視線がかち合った。


何だか盗み聞きしていたみたいで、思わず視線を逸らしてしまった。


いや、喫茶コーナーは共有スペースで、聞かれて困るような会話をするハズがないし、それを耳にしてしまったからといって私が後ろめたく感じる必要なんか全くないんだけど。


でも、ふいにある計画が浮かび上がり、それを見透かされてしまうような気がして勝手に焦って挙動不審になってしまったのだ。


その時浮かんだ計画こそが今日のこの「高藤さんと二人きりになろう大作戦」である。
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