一生もんの道化師
あの場で「私がお手伝いしましょうか?」と立候補してたとしても、おそらく速攻で断られてただろうな。

やっぱり、アポなし突入的なこの方法じゃないと二人きりにはなれなかったと思う。

我ながら賢明な判断だった。


ドラマや小説だったらこの勢いに乗って、さらに次なるステージである「愛の告白」へと進んだりするんだろうけど…。


クリスマスイブに想いを伝えるなんて、この上なくトレンディでロマンチックなシチュエーションだもんね。


でも、今の私にはとてもじゃないけどそこまでの勇気はない。


だって、ひそかに良いなと思っていただけで、高藤さんに対して今まで何のアプローチもして来なかったもん。


同じ営業二課に属しているとは言っても、男性は日中外回りで直行直帰したりするし、私達女性はあくまでも内勤でのサポートだから、結構すれ違いの勤務体制なんだよね。


もちろん、男性もデスクワークはするし、その際に共同で作業したりもするけれど、会話は終始ビジネスライクなものだし。


業務以外でほとんど接点のなかった私にいきなり気持ちを打ち明けられても、高藤さんは大いに戸惑ってしまうだろう。
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