一生もんの道化師
窮地を救ってもらって心底ホッとしたというのもあるけど、新人に対して「やってやる」「教えてやる」ではなく「やってみても良い?」という言葉を自然に投げ掛けられる、高藤さんのその人柄に感動した。


それから彼の存在が気になり出して、事務所内にいる時はついつい目で追ってしまって、真剣に仕事に取り組んでいる時のその表情にもときめくようになって…。


気付いた時には高藤さんの内面にも外面にも、すっかり惚れ込んでしまっていたのだった。


顔が好みだから好きになったというよりも、好きになった人の顔だからそれがストライクゾーンに入り込んだ、というのが正しい流れである。


何て事を考えながら視線を送っていたら、高藤さんが何かを感じ取ったように、ふいにこちらに顔を向けた。


さりげないつもりが、いつしかねちっこく変化していたのだろうか。


「あ!」


それだけでもギョッとしたのに、何故か高藤さんが焦ったように大声を発したので、さらに心拍数がはねあがる。


「白石さん、コップコップ!」

「え?」

「傾いて、中身が零れてるよ!」

「えっ!?キャー!」
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