一生もんの道化師
その言葉に促されてコップを見やると、おっしゃる通り、かなり内側に傾けてしまっていて、薄いピンクのブラウスの胸元からお腹にかけて紅茶が点々と垂れていた。


「ウソでしょー。もー!何で私ってこう…」


肝心な所でとんでもないポカをやらかすのかしら!


私は慌ててコップをデスク上に置くと、引き出しを開けてポケットティッシュを取り出し、中身を数枚抜き取ってブラウスの濡れた部分をポンポンと叩いた。


同時進行で、デスクの上や自分の足元に視線を配る。


とりあえず、ブラウス以外の場所に飛び散ったりはしていないようだ。


良かった…。


「洗ってこなくて大丈夫?」


被害を最小限に食い止められた事に安堵のため息を漏らしていると、高藤さんが問いかけて来た。


「それ、放っておくとシミになっちゃわない?」


「それ」とは言わずもがなで、ブラウスの事だろう。


「あ、いえ。大丈夫です。あんまり広範囲に濡らしちゃうと、乾かすのが大変だし…。それに多少時間が経ってしまっても、漂白剤に付けとけばたいていの汚れは落ちますから」
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