Snow mirage
雪道に残された足跡を必死で辿る。
けれどそれは、公園の入り口のところでなぜかピタリと途絶えていた。
白い息を吐きながら、握りしめていた掌を開く。
そこで光る四角い金属の中心に掘られているのは「LUI」の名前。
見覚えがあるに決まっている。
だってこれは、昨日昼間に拾った迷い猫が首輪に付けていた名札だ。
公園の入り口で消えた足跡を見つめながらふと思う。
そういえばあの子も、青みがかったグレイの毛と濃い緑色の目をしていたはずだ。
「まさか、ね」
金の名札を握りしめて呟く。
そのときどこかで、チリンと鈴の鳴る音がした。
それはルイがいたとき、私の耳に幾度となく届いていた音だった。
どこから聴こえてきたのか。それを探ろうと辺りに視線を走らせたとき、私のデニムのポケットでスマホが軽快に着信音を鳴らした。
いつから入れていたのだろう。
全く気づかなかった。
取り出してみると、着信の相手は学生時代からの友人だった。