White X'mas
「今日は寒いね、ジョイ」
傍らを歩く相棒に言いながら、私はいつもより少し賑やかな通りを歩いていた。
リハーサルも無事に終わり、気分の高揚した私はわがままを言って車を下り、家までの2ブロックをジョイと歩くことに成功していた。
盲導犬はバイオリンと同じ。
1日触れなければ、それだけ一体化することが難しくなる。
どう言って、渋っていた母を説き伏せ、歩き出したのはいいけれど、すれ違う恋人達の多さに私はもう辟易していた。
「私達も早く帰って、ゴハンにしよっか」
今日は1日ホールの中で大人しくしていたとはいえ、車移動のためにほとんど食べていないジョイはお腹が減っているだろう。
今夜は何か、ドッグフードじゃないスペシャルなものを食べさせてあげよう。
「確か…そう、冷蔵庫に何かあったはずよ」
用意しておいた大好物には、気づいていないはず……
ぶんぶんと尻尾が振られる様子を想像していたら、急にジョイが止まり、私は慌てて足を止めた。