センチメンタル・シュガー



「徳井さん、見て見て。あのトナカイ可愛い」



「おー、本当だ」



思わず指をさしながら徳井さんに話していると、トナカイはこちらに気付き手を振ってくれた



(…可愛い)

それに手を振り返すと、突然トナカイは道路を渡りこちらへ駆け寄ってくる。



「?どうかしましたか?」



『……』



そして無言でスッと差し出したのは、カラオケの宣伝用のポケットティッシュ



「?くれるの?」



『……』



うん、というように頷いてはトナカイはまた道路を渡りカラオケの前へと戻っていく。



「?何だ、わざわざこっちにまでティッシュ配りにきたのか?」



「そうみたい。仕事熱心だよねぇ」



「すみません、ケーキください」



「あっ、はい!どちらのサイズにしますか?」



不思議に思いながらも気に留める暇もなく、また再開させた仕事。

接客をして、声出しをして、仕事に集中しなきゃと励む。けれど目の前を通るカップルに度々奪われる視線



(…大和)



大和は今頃、何してるのかな

寒い中歩き回って、営業頑張ってるのかな

また取引先の人と飲んで、酔っ払って帰ってくるのかな



毎日一緒に同じ部屋で過ごしているのに

やっぱり彼が、遠いよ



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