蜜恋ア・ラ・モード

この笑みを見せるときの薫さんは、何か良からぬことを考えている証拠。

もう何を聞いても無駄みたい。

諦らめのため息をつき目線を薫さんの反対側に移すと、見慣れた風景が目に飛び込んできた。

高速を降りて2つ目の信号を右折すれば、もう私の家までは直進をしていくだけ。

薫さんの言っていたことは、一体何だったんだろう?

不思議に思いながらも安堵の胸をなでおろしていると、車は右折するはずの信号を直進してしまう。


「あ、あれ? 薫さん、今のとこ右折じゃないと」

「何で? 今から行くところは、洸太くんのところでしょ?」

「はぁ!? 洸太!! 何で洸太なの?」

「都子さんは洸太くんが好きなんでしょ? だったら、柳川さんが見た女性のことを確認しないと。ぼやぼやしてると、その女性に洸太くんを取られるかもしれないよ?」


そうだった……。そのことをスッカリ忘れていた。

四ヶ月前までは、私のことを好きだと言ってくれていた洸太だったけれど。さすがに彼氏ができた女のことなんて、いつまでも思ってくれているわけないよね。

人の心の移り変わりほど、不確かで早いものはないって言うし。

失意のどん底にでも突き落とされたかのようにがっくり項垂れていると、薫さんの容赦無い言葉が振りかかる。


「都子さん洸太くんへの思いはそんなものなの? 僕はそんなちっぽけな思いのために、都さんに振られたわけだ。やってられないね」

「そんなことない!! 薫さんには申し訳ないと思ってるけど、洸太への気持ちはそんな簡単に諦らめられるものじゃないから!!」

「でしょ? だったら突撃あるのみ。早く決着つけないとね」
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