蜜恋ア・ラ・モード
「離してよ」
「都子ってバカ? 俺が『はいそうですか』って、お前を簡単に帰すと思ってるわけ?」
「でも……」
チラリと目だけで彼女を見る。
洸太、何を考えているの? いくら幼なじみとはいえ彼女の前で、そんなセリフ言ってもいいわけ?
バカなのはどっちよ。
彼女の視線にいたたまれなくなって、洸太に掴まれている腕をブンブンと振る。でも洸太の腕を掴む力は、思った以上に強くて全く離れそうにない。
「なぁ。なにか俺に用があって来たんだよな? じゃなきゃ、お前がここに来るはずない」
洸太の確信に満ちた言葉に胸が疼く。
そうだよ。洸太に会いたくて、言いたいこと聞きたいことがたくさんあって。だから洸太に会いに来たのに。
洸太の隣には可愛い彼女がいて、何も言えなくなってしまった。
「別に用事なんて、なにもない……」
素直になれない私は、彼女みたいに全然可愛くなくて。
洸太から顔をそむけると、情けない自分を見られたくなくて俯いた。
薫さんに頑張れって言ってもらったのに。応援してるって励ましてもらったのに。
私って、全然ダメじゃん……。
「ふ~ん、まあ何でもいいや。都子、ちょっと手、出してみ」
「……手?」
そう聞き返してみたものの、手を差し出すことができない。
そんな私にしびれを切らしたのか洸太は私の手を無理やり開けると、チャリンと何か冷たいものを握らせた。