蜜恋ア・ラ・モード
「それ、俺の部屋の鍵。そこで待ってろ」
「え?」
「仕事終わったら、ゆっくり話し聞いてやるからさ。あ、部屋ちょっと汚れてるけど、文句言うなよ」
洸太は頭を掻きながらそう言うと私の腕から手を離し、彼女を連れて会社へと歩いて行ってしまった。
残された私はただポカンと口を開け、ふたりの後ろ姿を眺めていたのだけど。
私の横を通り過ぎて行く時の、彼女の顔が気になってしょうがない。
クスッて笑われた?
でもそれは嫌味な感じではなくて、どちらかと言えば友好的な微笑みといった方がいいもので。
「自分の彼氏が他の女を部屋入れるの、嫌じゃないのかな」
女心って、よくわからない。……って、私も女なんだけど。
今日はわからないことづくしで、ちょっと疲れてしまった。
「なんで、こんなことになっちゃったんだろう」
このまま帰って自分のベッドで、何も考えないで眠ってしまいたい。
でも洸太のことだ、絶対に怒ってやってくるに決まってる。
洸太は勝手に鍵を渡して行ってしまったし、洸太の部屋で待ってるしかないよね。
はあと大きなため息をつくと、しぶしぶ歩き出す。
とは言っても洸太の家は、洸太の会社の真上。一般に貸し出している、賃貸マンションの一室だ。
会社の裏手に回りエレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押した。