蜜恋ア・ラ・モード
部屋の前で、もう一度ため息。
よく考えてみたら、洸太の部屋に入るのは今日で三回目。
洸太がひとり暮らしを始めたのは大学生になった時だから、もう十年が経つ。なのに三回? と驚くかもしれないけれど、大抵洸太が私のいるところに来ていたから。
前の二回は、洸太が風邪を引いて寝込んだ時。
滅多なことで風邪を引かない洸太だけど、仕事を始めたばかりの時に熱を出した。
『バカは風邪引かないなんて言うけれど、洸太も普通の人間だったんだね』って笑ったら、『お前病人になんてこと言うんだ!!』なんて大怒りしてたっけ。
「懐かしい」
ひとりでこの部屋に来ることは初めてで、緊張からか胸がドキドキしてしまって鍵を回す手が少しだけ震える。
でもそれも玄関のドアを開けたところで、一瞬にして治まってしまった。
「なにこれ……」
確か洸太、ちょっと汚れてるけどって言ってたよね? これのどこがちょっとなの? 呆れて物が言えない。
玄関は脱ぎ捨てられている靴でいっぱい。リビングまで続いている廊下は、ゴミ袋や読み終えた雑誌で足の踏み場もないほどだ。
「洸太が来るまで、のんびりしようと思ってたのに」
入ってすぐがこの状態ってことは……。考えただけで恐ろしい。
頭をブルブルと振ると、頭の中に浮かんだ最悪な映像を消し去った。
「いっちょ頑張りますか」
無駄に時間があると余計なことを考えてしまう。今の私には、掃除に集中している方がいいかもしれない。
パパッと腕まくりをすると、きっと悲惨な状況であろうリビングへと向かった。