蜜恋ア・ラ・モード
私のことを見つめる四人の瞳を見つめると、感慨深いものがじわっと込み上げてくる。
幼い頃からの夢がかなったことに、涙さえ溢れてきそうだ。
でもここで泣き出す訳にはいかない。緊張した身体で大きく息を吸い込むと、気持ちを落ち着かせる。
「では、初心者Aコースのレッスンを始めたいと思います」
いつも通りの自分を心がけて発した言葉だけれど、緊張は隠し切れない。そしてその緊張が四人にも伝わってしまったのか、部屋の空気が重いものに変わろうとしていた。
(都子、ここは“スマイル料理教室”でしょ? 笑顔が消えてる。もっと肩の力を抜いて……)
どこからか、そんな言葉が聞こえてきた。
そっか、コレは私の心の声。笑顔が絶えない空間になれば……そう願ってつけた教室の名前なのに。その笑顔を、私が忘れてどうするの!!
そして料理を始める人たちと、食事・料理を難しく考えないで一緒に楽しむ。
だから先生と生徒と言うよりは、友達のような感覚で。
でも授業料を頂いているのだから、そこは気持ちを引き締めて。
有名な料理教室みたいな特別な設備はないけれど、きめ細やかな対応ができるように。
何より、私らしい教室になるように───
その気持ちを思い出すと、ふと肩の力が抜け、本来の笑顔が戻ってくるのを感じた。
「ごめんなさいね。ちょっと緊張してしまって。まずは私の自己紹介から……」
一回目の今日は、二回目以降よりも一時間余分に時間を取ってあった。
自分のことも話しておきたかったし、初心者コースを選んだ人たちにはその理由を聞きたかったからだ。
まずは自分の話から手短に、料理教室を開くきっかけになる話を終えると、高浜さんに笑顔を送る。