蜜恋ア・ラ・モード


「じゃあ次は、今日ここに一番に来てくれた、高浜さんに答えていただこうかしら?」

「えぇー?」


自分が最初になるとは思っていなかったのか、高浜さんが驚いた顔をしている。その顔がちょっと面白くて失礼だと思いながらも俯いてクスッと笑っていると、受講者リストが目に入る。それには名前や年齢、住所や電話番号の他に、未婚か既婚かも記入してある。

高浜さんは既婚者で、お子さんもふたりいるんだ。

この辺りが、このコースを選んだ理由かしら。

リストから顔を上げると、もう一度高浜さんを見た。


「高浜さんがこのコースを選んだのは、お子さんのため?」

「い、いえ……旦那のためと言うか……」


そう言って照れくさそうに俯いてしまった高浜さんに女性陣が色めき立つ横で、有沢さんがボソッと一言言葉を漏らす。


「羨ましいな……」


その声がなぜだかもの悲しげに聞こえて、全員が有沢さんに注目してしまう。

男のひとり暮らしって言っていたからね。三十二歳の大人の男性、しかもスーツの似合う素敵な人だから、彼女のひとりやふたりはいるだろう。

……って、ふたりはいないか。

でもさっきの寂しそうな声。ちょっと気になる。

女性陣の視線が気になったのか、有沢さんの顔が照れくさそうにに歪むと、私は彼に質問を投げかけた。


「ホント、高浜さんの旦那様は幸せですね。私も羨ましいです。ところで、有沢さんはどうしてこのコースにしたんですか?」


何故だろう。有沢さんからどんな答えが返ってくるのか、気になって仕方がない。

ただ単に料理を一から覚えたいと言うだけでは、絶対になさそうだし。

鼓動が速くなっていくのを感じながら話しだすのを待っていると、有沢さんがゆっくりと口を開いた。











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