蜜恋ア・ラ・モード
お膳立て(食事の準備)も整い、初めての試食会が始まった。
先日、洸太と買いに行った器に盛った筑前煮をテーブルの真ん中に置く。
思っていた通り。
優しい絵柄に、筑前煮の色合いが見事にマッチしていた。
「先生。この盛鉢、素敵ですね」
柳川さんが器を手に取ると、梅本さんも近くに寄ってその器を眺めた。
「でしょ。一度見てから、ずっと頭から離れなくて。この教室を始める前に買いに行っちゃったの」
「そうだったんですか。これはどこで買ったんですか?」
高浜さんに尋ねられ、自分のデスクに向かうと一枚のチラシを手にした。
「ここなんだけどね。先週、洸太と一緒に行ってきたんだけど……」
そこまで言いかけて口を閉じる。しまった……ひと言多すぎた。
なんでここで洸太の名前を出したのかと後悔したのもつかの間、柳川さんが鋭いツッコミ。
「やっぱり都子先生と洸太さん、付き合ってるんじゃないですかぁ」
梅本さんと一緒になって、ふたりでやんやと囃し立て始めた。
だよね、こうなるよね。言ってしまったことはしょうがないけれど、女の子はこの手の話が大好きだからしばらく落ち着かないかなぁ。
でも有沢さんは……。
ゆっくり彼の方を見てみれば。穏やかに微笑む彼の目とぶつかった。
その目はやっぱり何かを語っていて。でも肝心な事は何もわからなくて。
有沢さんの瞳に吸い込まれそうになるのを、必死な思いで引き止めた。
「さ、さあ。私のことはいいから、早く食べましょう。みなさん席について!!」
パンパンと手をたたき、その場を沈める。お喋りに花の咲いていたふたりも、パッと席についた。
もちろん有沢さんもゆっくりと席につき、でもその視線は私から離れることはなかった。