蜜恋ア・ラ・モード
11時過ぎから慌てて始めた準備も薫さんに手伝ってもらったおかげで、高浜さんたちが来る前になんとか間に合った。
それにしても、薫さんの変わり様には正直驚きだ。
真佳さんの話を聞いた時は不安な気持ちを隠せなかったけれど、それでも私のことを好きだと言ってくれて気持ちが通じ合うと自然と身体の力が抜けた。
そんな私の様子を楽しむかのように何度も抱きしめてキスをして。
この続きは今夜たっぷり……なんて。
準備中も何かと言うと近づいてきては熱い思いを囁いて、私の身体を翻弄する。
見た目や人当たりだけだと草食系かと思っていたのだけど、案外肉食系?
ガッツリ食べられてしまう日も、もうそんな遠くはなさそうで。
薫さんをチラッと見ては、小さくため息を漏らした。
「レシピを見てもわかるように、今日は中華に挑戦してもらいます」
腕まくりをすると手を洗って、キッチンテーブルの前に立つ。
初心者Aコースも今日で四回目。
高浜さんをはじめ、梅本さんと柳川さんも準備万端。エプロンを付け終えると、レシピに目を通している。
薫さんもギャルソンエプロンを付けると、レシピを手にし顔を上げた。
突然重なった視線に、心臓がドキンと跳ねる。
薫さんの熱を含んだ瞳に囚われてしまいそうになって、ブルブルと頭を振るとそれを振り切った。
危ない、危ない。
今から講習を始めるというのに、薫さんのことで自分を見失うところだった。
薫さんも薫さんだ。高浜さんたちがいるというのに、彼女たちが来るまでと全く変わらない調子なんだから。
ちょっとだけ怒った顔を見せると、薫さんは可笑しそうに微笑んで。声は出さすに『愛してる』と言葉を告げるとレシピへと目を落とした。