5年目のクリスマス
「先輩、クリスマスツリーのブローチ、持ってますか?」
私がカバンからブローチを取り出すと、先輩は驚いた声をあげた。
「それ、俺もタクシーでもらったぞ」
先輩がズボンのポケットから取り出したのは、私が手にしているものと同じブローチだった。
ということは、あの運転手さんが私の前に乗せていたお客さんは先輩のことだったんだ。
偶然にしては出来過ぎてる。
あの運転手さんのおかげで、私はホテルの前で回れ右して逃げ出さなかったと言ってもいい。
本当に感謝だ。
温かい気持ちで二つのブローチを眺めていると、ふと先輩の視線に気づいた。
ん?視線を上げるとにやりと笑っている口元。
「まさか、これも仕組まれてたの?」
思わず叫んだ私に、先輩はしれっとした声で答える。
「まさか、さすがに俺もそこまでは無理だ。これはきっと、サンタの魔法だな」
その時、私の手の上のブローチが、キラリと光ったような気がした。
メリークリスマス!
【FIN】


