5年目のクリスマス

「いいえ、えっと……一身上の都合です」

「一身上の都合って、結婚とか?」

「それはありえません、付き合ってる人もいないのに」

真面目な顔で聞いてくる先輩に、思わず大きな声で反論した。

「おまえ、声でかい」

私の大きな声に慌てた先輩は私の口を手でふさぐと、周囲の視線から遮るように私を抱き寄せた。

無意識だろうけれど、私を守ってくれようとするその体温に、一瞬で頬が熱くなる。

私の口元をふさいでいた手がふっと離れたと同時にその熱も引き、寂しさを感じて切なくなる。

いつもそうだ。

優しい言葉や視線を向けてくれても、私がそれに舞い上がりそうになるとすっと離れていく。

私が先輩のことを諦められずにいると知っていて、意味深な態度で私をいじめる。

それがつらくて会社を辞めようとしていることに気付いていないのか、それともわざとそんなことをして私を遠ざけようとしているのか。

「先輩……どうして」

どうして、私をきっぱりと遠ざけてくれないのかと、そして、恋人がいるのにどうして今日この場に来たのか。

……お見合いの席に。

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