甘い恋の始め方
(たとえ、そうだとしても俺が最初に話しかけたんだ)

そんな悠也の表情一つ見逃さなかった篠原は渋い顔になる。

「婚約するにはあまりにも早いんじゃないのか?」

康子のことを考えればそんなことも言っていられないが、篠原としては早い決断で後悔してほしくない。

「早いと思いますが、彼女となら良い家庭が築けそうですよ。後悔はしません」

「可愛い人だったが……なにからなにまで彼女のことを知ったわけじゃないだろう?」

篠原は苦虫をかみつぶしたような顔だ。

「そうですが、そんなことを言っていたら――」

「ああっ、わかった! わかったよ。お前の結婚だ。お前が良いなら良いさ」

篠原は両膝をパシッと叩いてから立ち上がった。

社内で飛び交った噂を耳にした篠原は、これから商談で出なければならないのだが寄ってみたのだ。

「近いうちに彼女を誘って食事に行こう」

早口にそう言って篠原は慌ただしく悠也の執務室を出て行った。


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