甘い恋の始め方
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玄関で先に入るように言われた理子はムートンブーツを脱いだ。

廊下は足元灯しか点けられておらず、薄暗い。悠也はなぜか電気を点けようとせずに、理子の手を取り中へ進ませる。

リビングに入ったところで、色々なライトが光る大きなクリスマスツリーが目に入った。

クリスマスらしいロマンティックな雰囲気がそこにあった。

「誕生日おめでとう」

「どうしてそれを……?」

誕生日なんて言っていなかったし、まさか知っているとは思っていなかった。

悠也は答えずに、リビングの室内灯を点けた。

ガラスのダイニングテーブルの上に食器やカトラリーがセッティングしてあった。

(これは……私のため……?)

「知り合いのフレンチシェフに無理を言って作ってもらったんだ。知ってるかな? 谷本遥人氏を」

青山に店をかまえている谷本遥人に無理を言って、特別に作りに来てもらったのだ。遥人とは彼がフランスで修業している時に出会った古い友人だ。

彼の経営する店は数ヶ月先まで予約が埋まっている。そんな彼に今日は一生に一度の大切な日だからと言うと、そう言うことなら是非にと快諾してくれ、何とか都合をつけて悠也が留守中に来てもらったのだ。

「テレビにも出ている有名な方ですよね?」

(テーブルセッティングもその方がやったのだろうか)

美しい燭台と食べるのに邪魔にならないようにあしらわれたバラのアレンジメント。自宅ではなかなかここまで行き届かない美しいテーブルセッティングだ。

「ああ。彼のフレンチは今まで食べたどのフレンチより美味しいんだ」

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