甘い恋の始め方
「飲みましょう」

悠也はグラスを持ち上げると、軽く掲げて乾杯のジェスチャーをする。

理子も小さく持ち上げ、そっとカクテルグラスを口にした。

「美味しいですか?」

「はい。ほんのり甘くて、リキュールの香りが爽やかです」

「よかった」

悠也に微笑みかけられると、理子の胸の中で無数の蝶が羽ばたき始める。

(心臓よ、暴れるな)

微笑むと冷たく見える端正な顔が甘くなって、落ち着かない気分にさせられる。

「またパーティーに参加するんですか?」

気になって理子は聞いていた。

悠也はグラスをぐっと煽るように飲む。

「パーティーより、見合いの方が気が楽なことに気づきました」

「お見合いもされたんですか?」

「ええ。もう数えきれないくらい」

「恋人はいらっしゃらないんですか?」

「今はいません。俺のことばかりですね。理子さんの今までの彼氏と結婚を考えなかったんですか?」

理子は軽く首を横に振るだけにした。

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