恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―
「そっかー。カイくんよく言ってたもんねー。
大野さんはお酒飲めないから一緒にいてもつまらないって」
「莉子の前で言うなって」
ねぇカイくん、とネコナデ声で言われた元カレは苦笑いしてそう止める。
その姿を見て、ああなるほどと思った。
わざわざここに呼んだのは、坂下さんが希望した事で、坂下さんは私に仲のよさを見せびらかしたかったのか。
「会社クビになってからまだ次の仕事見つからないんでしょう?
そりゃあ飲んでる場合じゃないわよねぇ。
ここ、値段は良心的だけど、大野さんのお財布にはきついものね」
私が辞めさせられたのは、私がうまく周りに合わせられなかったからで、この人たちのせいじゃない。
そうは思うけど、こんな風に言われるのは納得できなかった。
浮気だとかはもういい。
恋人がいるのを知りながらも好きになっちゃう事は仕方ないとも思うから、それに対して今更何も思わない。
だけど、仕事も部屋も恋人も失った私をわざわざ呼び出してまでこんな風にバカにされて、黙ってる理由はない。
だから、今まで全部飲み込んできた分、文句をぶちまけてやろうと思ったけれど。
売り言葉に買い言葉みたいなケンカをしたところで、結局むなしい思いをするだけなんじゃないかと思い直す。
私が悔しがって怒るのをお酒のつまみにしたがっているとしたら、その通りにしたら思うツボなんじゃないかって。