恋踏みラビリンス―シンデレラシンドローム―


「大野さんも可哀想よね。なんでもいいなりになってたのに、それで捨てられるなんて。
私だったら考えられないなぁ」

泣いちゃダメだ。悔しがっちゃダメ。
こんな人たちのせいで泣く必要も苦しむ必要もないんだから。

何度も何度もそう言い聞かせても、歪んでいく顔も瞳を覆っていく涙も止められなくて。

止まれって思うのに浮かび始める涙がこぼれそうになるのを隠すために、ぐっと顎を引いた時。
肩を強く抱き寄せられた。

「――莉子は今、俺の部屋に住んでるけど」

知っている声に驚いて見上げると、私の肩を抱いているのは確かに和泉くんで。

突然現れた事に驚いている私に視線を返すわけでもなく、和泉くんは元カレたちを見ていた。
冷たい瞳が、いつも以上に無感情に見えた。

「これ以上悪趣味な遊びにつきあってる暇はないから早く鍵渡せ」
「鍵……?」
「莉子の荷物運び出せって催促してきたのはそっちだろ。
今から要求通り運び出すから、鍵」

急な登場に驚いた様子だった元カレが、ポケットの中から鍵を取り出して和泉くんに渡す。
和泉くんはそれを受け取って、私にそれが部屋の鍵かを確認させた後、じゃあ行くかと私の肩を抱いたまま歩き出した。


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