いとしいあなたに幸福を
ただ一度も母の腕に抱かれなかったことと、父が全く彼の元へ寄り付かないことを周囲は不憫がった。

「周様は…一度も京様を抱っこされていないの?」

「ううん。厘様が亡くなられる前に一度。京様はお元気だから、すぐ保育器から出されても問題ないってことで…そのときに抱いて差し上げてる筈よ」

「…せめて、都様の忘れ形見だけでも大切にして頂ければいいのだけど」

「…結局、妊娠や出産の影響もあって都様は亡くなられたんだもの。京様に接するのもおつらいんじゃないのかしら。それに京様は…」

京は、都と同じ空色の眼をしていた。

そのとき傍にいた者から聞いた話に依れば、それに気付いたとき周はとてもつらそうに表情を歪めたらしい。

周にとって京の存在は、周囲が考えるよりも複雑なのかも知れない。

見守ることしか出来ない者たちは、一日も早く周が立ち直ることを祈るしかなかった。


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