いとしいあなたに幸福を
「…お前、このまま再婚しないつもりなのかよ」

想い続けてさえいれば、いつかは――なんて夢見がちなことを愛梨が考えているとは思いにくいが。

周が特定の相手を選ばないために余計諦めがつかない、ということはあるまいか。

だが再婚が決まったらそれはそれで、また愛梨は悲しむだろう。

「今のところはな。誰とも一緒になるつもりはないよ。俺の家族は都と京の二人だけで、いいんだ」

誰とも、再婚しない。

それなら愛梨はこれ以上、周のことで悲しまずに済むのだろうか。

いつかは周のことを、諦めてくれるのだろうか。

「その京だがな…愛梨を母親だと思い込んでるらしいじゃないか」

そうなると、残すところ気掛かりなのはこのことか。

「ああ…何度も言い聞かせてはいるんだけど、今はまだ上手く理解出来ないみたいで…」

「まあ、まだ二歳じゃ難しいだろうけどな。もし愛梨がお前の傍にいるのがつらいようなら…京には悪いが、俺は愛梨を連れて此処を出るよ」

もっと早くにそうすれば良かった。

それなら愛梨の想いを周に知られて、愛梨が泣くことも周を煩わせることもなかったんだ。

「ん…そのほうがいいかもな」

「愛梨にも俺から話してみるよ。お前だって、愛梨がいつまでもお前のこと引き摺ったまま傍にいるのは落ち着かないだろ?」

「俺、は………」

だが予想に反して、周の回答はやけに歯切れが悪かった。
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