『イロモノなアタシⅡ 小鬼更正計画』
携帯をにぎりしめたまま、時間はどんどん過ぎて行く。


今、もう寝ているだろうか。


声だけでも聞きたい、あの話なんかしなくてもいい。


気持ちを切り替えて、発信履歴から敬介の電話に向けて通話ボタンを押す。


『もしもし? 志穂、どうしたのこんな時間に』


後ろから聞えるのは、スタジオの音。


「ごめんね、まだ仕事中だよね」
『大丈夫、今、終ったから。ね、今度ネタ見てくれる? 』
「いいの? ライバルなのに」
『いいよ、評価が聞きたいから』


ボタボタっとヒザの上に涙が落ちる、本当に言いたいのはこの話じゃない。


「ありがとう、敬介」
『どうしたの? 鼻声だよ。カゼでもひいた? 寒いから気を付けて』
「うん……」


カゼだよ、こんなの。


泣いてる鼻声じゃないんだ、ごめんね。


『早く寝るといい、治らないと会うヒマ無くなるし』
「そうだね、うん」
『志穂、もし何かあったら必ず俺に言ってよ』


通話口を押えて、鼻水をすすり上げる。


涙もゴシゴシ袖で拭いた、でも止まらない。
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