【完】『いつか、きっと』
翌日。

「えぇ結婚式やったなー」

帰りの新幹線で翔一郎は言った。

「でも」

うちらはもう少し規模小さい方がえぇな、とだけ言うと、

「愛ちゃんは身の振り方、どうすんのや?」

えらくストレートに訊いてきた。

「えっ…?」

愛は戸惑いを隠せない。

「薫子ちゃんに新しいパパ探してやらな…将来が大変やで」

「…まぁ、こればっかりは縁ですから」

愛はそう答えるしかない。

「…せやな」

翔一郎も、そこを衝かれると返しようがなかった。

やがて。

京都駅に着くと、改札口の向こう側には、薫子とジャックを連れたブラウンがたたずんでいる。

「ママー!」

薫子が愛のもとへ駆け寄る。

「ちゃんとお留守番できてた?」

すっかり母親の顔である。

「あ、ブラウンさん、これお土産です」

紙袋はエマが渡した。

「中華街に寄ったんで、これかなと」

点心の詰め合わせである。

「ありがとうございます」

「愛ちゃんが、ブラウンさんはベジタリアンやからって言うてくれたんで、野菜の点心探して見つけたんですわぁ」

翔一郎には、何でも笑い話にしてしまう癖があるらしい。

「わざわざすいません」

「いやいや、こういうのを日本じゃ相見互いっていうのや」

要は人付き合いはお互い様や、という言い回しで翔一郎は言った。

「人は一人でも生きられるけど、何でもかんでも一人じゃつまらんしやね」

まぁ一人より二人がえぇ日もあります、と翔一郎はさながらスピーチみたいなことを言った。

「やっぱり饗庭さんは、面白い」

ブラウンは笑う。

「さよか?」

「もしかしたら、饗庭さんは何かもたらしてくれるかも知れないですね」

ブラウンは上品に笑みを浮かべた。

町っ子で人懐っこい翔一郎とは、明らかに対照的であろう。




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