【完】『いつか、きっと』
世間は夏休みに入った。

次の年の初めてのオリジナルカレンダーが発売されることとなって、翔一郎は過去のデータベースを引っ張り出し、

「京都の四季、かぁ…」

と呟きながら写真選びを始めている。

七月は祇園祭、八月は五山の送り火と相場は決まっている。

が。

問題は三月と十二月である。

三月は桜であまりにも有名な場所が多すぎて絞り込めず、逆に十二月は、顔見世の写真が権利の問題で使えなくて題材がないという難問が生じたのである。

日頃だと写真選びに迷わない翔一郎も、

「おれが桜の写真で普通に鴨川とか銀閣寺道出したら詐欺扱いされるがな」

変化球を求められているのが、翔一郎にはわかるのである。

「でも仁和寺や平野神社は本寸法やと四月が桜の見頃やしなぁ」

そこで。

選んだのは、北白川の枝垂桜である。

「確かこいつなら遅咲きのはずや」

そうして四月にずらし、三月は人形寺の雛人形の写真で決まって、カレンダーの難関は何とかなった。

「あとは師走か…」

そこは。

決まらないまま、七月は過ぎた。

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