【完】『いつか、きっと』
月が変わった頃、鎌倉の紺野萌々子から珍しく手紙が来た。

彼氏の實平慶と連名になっている。

「えらい珍事やな」

翔一郎が笑いながら封を切ると、

「…結婚式の案内やて」

エマは覗き込んだ。

「ついに萌々子ちゃんとお慶さん結婚するんだー」

感心しきりに嬉しげな顔をしてエマは言う。

「今月の末か…うまい具合にジューンブライドになったな」

しかも会場ニューグランドやぞ、と翔一郎は驚いた。

「修学旅行で見たけど、まるで大統領の宮殿みたいなホテルやぞ」

よう慶のやつそんな豪華な場所取れたな、と翔一郎はさらに目を見張った。

あとから分かったのだが、ホテルの取締役が萌々子の祖母の近所に住んでおり、その縁もあって、慶のいる花屋もニューグランドに、生花をたびたび納品していたのである。

「慶のやつ店長になって、銀座の新店舗を任されることになったんやな」

読み進んでゆくと、だいぶ前に東上した時のことを思い出したらしく、

「あの時エマ横浜に行ったやろ?」

あれで気づいたんや、と言い、

「おれエマがおらなんだら何の埒もあかんって」

苦笑いしながら、耳まで翔一郎は真っ赤になった。

「照れる翔くんって可愛い」

「からかうな」

そう言いながら翔一郎は、悪い気持ちはしなかった。



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