繋がる空の下、繋がらない電話
『……頼むからもうちょっとだけ待ってて欲しいんだ』
「え?」
『連絡しなかったのは悪かったよ。でも俺だって必死なわけ。ここで足場を固めないと先のこと考えられねーし』
「足場って?」
『先の事考えたらさ。この距離なんだから、一緒になりたきゃお前に仕事辞めてもらうしか無いじゃん。だったら、もっとガッツリ稼げるようにならないと胸張ってこっち来いなんて言えないだろ』
「隼也」
なんだ。
ちゃんと考えてくれてたんだ。
私よりももっとずっと現実的な観点で、彼はきちんと未来を見つめていてくれたんだ。
『とにかく、二十日の夜にはそっち行くから。ホテルも取ってあるからお前親に外泊許可とっておいてよ』
「え?」
『その頃には仕事落ち着くはずだから。寂しくても我慢してて』
「私、隼也はクリスマスのことも忘れてるんだと思ってた」
『だいぶ前から予約してあるよ。忙しくて言いそびれてただけだ』
「……バカァ」
再び瞳からあふれだす涙を、私は腕で拭った。
電話の向こうに、彼が元気になるような声を届けたいのに、鼻をすする音しか出せない。
止まらない私の嗚咽を聞いて、隼也は小さくこう返す。
『馬鹿だな。そんなに俺のこと好きなのか』
図に乗ってるような言い方が気に入らなくもあるけど、事実なので仕方ない。
「馬鹿だから隼也が好きなんだよ」
『どういう意味だ』って笑った彼がふっと息を正すと、『すみません、すぐ戻ります』と会社用の声で言った。