ハリネズミの恋
太がセットに向かって歩き出す。

「ねえ、霧ヶ峰くん」

針井が俺の名前を呼んだ。

呼ばれて視線を向けると、困った顔をしている針井と目があった。

「どうした?」

俺がそう聞くと、
「…わたし、迷惑だった?」

針井が困ったように答えた。

「んな訳ねーだろ」

俺は返した。

「でも…わたし、大政くん――と言うよりも、クラスのみんなと1回も会話したことないし…」

針井は悲しそうに言って、悲しそうに目を伏せた。
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