龍神様との恋愛事情!
「だから言ったのだ」
闇の中から、第三者の声がした。
「伊吹!?」
千早様が敏感に反応する。
伊吹様…?伊吹様が来たの?
私は痛みに耐えるためにきつく閉じていた瞼を開いた。
「痛むか」
暗闇から私を見下ろす伊吹様の翡翠色の瞳が、ぼんやりと見えた。
「非情な質問だな。見ればわかるものをっ」
千早様が私をギュッと抱きしめる。
い、痛い…。
「ならば今すぐ沙織を連れて行く。異存なかろう」
伊吹様のひんやりとした指先が私の手に触れた。
「やっ…ダメ、です」
まだ…行けない。
「あし、た…まで…まっ」
せめて明日まで…。
おばあちゃんが治るまで待って…!
「沙織……愚かな。苦しみが長引くぞ」
伊吹様の声は怒りと呆れの響きを含んでいた。