龍神様との恋愛事情!

涙が溢れそうになる衝動を堪えて、私は千早様の着物を握った。


「千早様…ありがとう、ございます。本当に……ありがとうございます」


絞り出すような声が出た。

我ながら、情けない。

嬉しいんだからもっと元気よくありがとうって言いたいのに……今はちょっと、無理みたい。


「泣きそうだね、沙織」


囁かれてドキリとした。

千早様にはバレバレなんだね。


「笑ってくれないか?私は沙織の喜ぶ顔が見たくて願いを叶えたんだよ?」


はい…。

わかってます千早様。

今、笑顔を作るから…もう少しだけ、待っ――。


急にぽろぽろと、私の目尻から雫がこぼれた。


ダメだ…。

私の涙腺、もたなかったよ。


「沙織…」


千早様がそっと抱きしめてくれた。


嬉しいんだよ?

嬉しいから……。

今はただ、泣かせて下さい。






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