龍神様との恋愛事情!
そして、数分後。
長い登り道が終わり、開けた場所に出た。
目の前には、ここ数日で見慣れてきた朱い鳥居。
その奥には古い社殿があり、社殿の傍には井戸くらいの大きさの池がある。
「千早様…」
池の近くの木に寄り掛かるようにして立っている千早様が目に映った。
彼は私達に気がつくと、池の方に来るよう手招いた。
一歩踏み出すたびに心臓がドキドキと高鳴る。
ここに来てやっと、私は僅かな緊張を覚え始めていた。
「へぇー、こんな山頂に池なんてあったのね」
お母さんとお父さんが物珍しげに塒池を眺めている傍らで、私は千早様に尋ねる。
「池から行くんですよね?」
「うん。そうだよ」
「濡れませんか…?」
冬だから服がびちょびちょになるのは困りもの。
ちらっと視線で訴えてみると、千早様は余裕そうに笑った。