龍神様との恋愛事情!
伊吹様が降らせた大雨は長雨となった。
あの日以来、毎日降り続く雨に村のみんなは困り顔。
「梅雨の時期でもないのに、おかしいわねぇ」
「もう一月くらいにならねぇか?」
お母さんとお父さんの会話を背中に聞いて、家を出る。
雨が降ろうが槍が降ろうが、生きるためには伊吹様のところへ行かなくちゃ。
……ううん。
私が行きたいだけだ。
会いたいの。伊吹様…。
藁笠(わらがさ)をかぶり、私は山道を歩いた。
「伊吹様!」
珍しいことに山の中腹で伊吹様と出会った。
伊吹様は綺麗な朱い傘をさしていた。
「俺が会いに行くと言ったはずだが」
私を傘に招き入れながら咎めるように言う伊吹様に、私は笑顔を向けた。
「私が来たかったんです」